想いをつなぐ相続コンサルタントKayoこと 中垣香代子です。
横浜を拠点に、大切なご家族の想いと資産をつなぐお手伝いをしています。
前回のブログでは、ご主人が亡くなった後に受け取れる年金額(遺族年金)が、専業主婦家庭や共働き家庭でどのように変わるのか、その現実的なシミュレーションをお話ししました。
多くの方が「思ったより減ってしまうのね……」と驚かれたのではないでしょうか。
今回は、さらに一歩踏み込んだテーマをお届けします。
最近、老後の資金準備としてよく話題になる「年金の繰り上げ(65歳より早くもらう)」や「繰り下げ(65歳より遅くもらう)」。 「少しでも受給額を増やしたい」「早くもらえるものはもらっておきたい」と検討される方はとても多いのですが、実はここに、「遺族年金との組み合わせで発生する大きな落とし穴」が隠されているのをご存じですか?
良かれと思って選んだ方法が、万が一の時に「こんなはずじゃなかった……」という後悔に繋がらないよう、まずは、年金繰り下げの注意点をお伝えします。
老齢年金の繰り下げと注意点

老齢年金の繰り下げとは、原則65歳から受け取る老齢年金を、最長75歳まで遅らせることをいいます。
※ 繰り下げの場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給開始時期を合わせる必要はありません。
1か月遅らせるごとに、0.7%年金が増えます。
5年遅らせて70歳から受け取り始めた場合は、65歳で受け取る金額の1.42倍になります。
(月10万円なら14.2万円に!)
10年遅らせて75歳から受け取り始めた場合は、65歳で受け取る金額の1.84倍になります。
(月10万円なら18.4万円に!!)
<老齢年金繰り下げの注意点>
受給額を増やすことができる「繰り下げ」ですが、注意点があります。
これを知らずに気軽に繰り下げすると、後で後悔するかもしれません。
1.遺族年金や障害年金には増額が反映されない
2.「加給年金」(家族手当のようなもの)が繰り下げ中は支給されない
3.他の公的年金の受給権が発生すると繰り下げがストップする
4.税金や社会保険料の負担が増える
5.健康保険利用時や介護保険利用時の自己負担割合が増える可能性がある
など
繰り下げで増やした年金は、遺族年金には引き継がれません

「自分が亡くなった後、妻が少しでも豊かな暮らしを送れるように、自分の年金を繰り下げして(遅くもらって)増やしておこう」
そう考えて、受給開始を70歳や75歳まで繰り下げて(遅らせて)、毎月の受給額を最大84%も増やそうと計画している優しいご主人はたくさんいらっしゃいます。 しかし、ここにとんでもない落とし穴があります。
<老齢年金繰り下げの注意点>でお伝えした通り、ご主人がどんなに厚生年金を増やしていても、その「増額分」は遺族年金には一切反映されません。
遺族厚生年金を計算する際の基準となるのは、増やした後の金額ではなく、「増額される前の本来の【65歳時点】の金額」と法律で決められているからです。
ご主人が亡くなった瞬間に、繰り下げによって一生懸命増やした上乗せ分は消滅し、奥様がもらう遺族厚生年金は「65歳時点の本来の額」にリセットされてしまいます。
■夫婦2人が健在のときの年金(65歳で受給開始した場合)
(老齢基礎年金は満額・未成年の子どもはいないと仮定)
2026年度の老齢年金平均受給額をベースに計算しました。
夫の年金:老齢基礎年金(国民年金) 7万円 +老齢厚生年金 10万円
妻の年金:老齢基礎年金(国民年金) 7万円+老齢厚生年金 0万円
2人の合計:24万円(年間288万円)
■夫婦2人が健在のときの年金(70歳で受給開始した場合)
(老齢基礎年金は満額・未成年の子どもはいないと仮定)
2026年度の老齢年金平均受給額をベースに計算しました。
夫の年金:老齢基礎年金(国民年金) (7万円+老齢厚生年金 10万円)×1.42
妻の年金:老齢基礎年金(国民年金) (7万円+老齢厚生年金 0万円)×1.42
2人の合計:約34万円(年間約408万円)
■70歳まで繰り下げしたのち、夫が亡くなったとき
<老齢遺族年金の計算方法>(下記の多い方)
①亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3
②亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の2分の1+自身の老齢厚生年金の2分の1
①10万円×3÷4=7.5万円
②10万円÷2+0万円÷2=5万円
①の方が多いので、このケースの遺族厚生年金は①の金額となります。
残された妻の年金は…
・妻の老齢基礎年金 7万円×1.42=9.94万円
・夫の遺族厚生年金 7.5万円
合計 17.44万円
亡くなる直前に受給していた金の半分になってしまいます。この落差は大きいですね。
「夫が年金を増やしてくれたから、一人になっても安心ね」と夫婦で信じ切っていると、いざという時に「思っていた年金額と違う!予定していた生活費が足りない!」ということになりかねません。
元気な「今」キャッシュフロー表で未来を設計する

ここでは、<老齢年金繰り下げの注意点>の1.しかお伝え出来ませんでしたが
ほかにも注意すべきことはたくさんあります。
年金制度には気づきにくい「落とし穴」がいくつも存在するのです。
知らずに対策を先延ばしにしていると、大切なパートナーが残された際、長生きしたことで生活費が底を突いてしまう……という、とても不安な老後を送ることになりかねません。
だからこそ、私が相続対策の最初の一歩として強くお勧めしているのが、将来のお金の流れを数字で見える化する「キャッシュフロー表の作成」です。
キャッシュフロー表を作成すると、
- 万が一、ご主人が先立たれたとき、奥様の年金は実際いくらになるのか
- それに対して、毎月の生活費や住まいの維持費はどれくらいかかるのか
- 何歳時点で、手元の貯蓄がどのくらい残っているのか(100歳まで安心していられるか)
これらが、すべてグラフや表になって一目で分かるようになります。 「これだけの現金を奥様の手元に残しておけば、絶対に老後の資金はショートしない」という具体的な数字の裏付けができて初めて、本当に安心できる「遺言書の書き方」や「遺産分割のバランス」が決まるのです。
想いをつなぐ相続コンサルタントKayoからのメッセージ
年金の仕組みや老後のお金のシミュレーションは、複雑で、一人で考えるのは本当に大変な作業です。
「繰り上げや繰り下げ、うちの場合はどっちがいいの?」 「万が一の時、私の生活費はどうなるかしら?」
そんな不安や疑問を抱え、モヤモヤしている時こそ、専門家に相談する最高のタイミングです。
お問い合わせフォームより、お気軽にご連絡ください。
次回は、年金の「繰り上げ」と注意点についてお届けします。お楽しみに!
