年金を「繰り上げ」する前に知っておきたい!「早くもらう」制度の大きな注意点

中垣香代子
中垣香代子

横浜の女性相続コンサルタントKayoこと中垣香代子です。
「想いをつなぐ相続コンサルタント」として、相続後の暮らしやお金のことまで見据え、ご家族のこれからを一緒に考えています。

前のブログでは、ご主人が亡くなった後に受け取れる年金額(遺族年金)が、専業主婦家庭や共働き家庭でどのように変わるのか、その現実的なシミュレーションや「年金の繰り下げ(65歳より遅くもらう)」の注意点をお話ししました。

今回は、年金繰り上げ(65歳よりも早くもらう)たときの遺族年金への影響についてお話しします。

公的老齢年金の受給開始は原則65歳ですが、希望すれば60歳から64歳までの間に早めて受け取ることができる「繰り上げ受給」という制度があります。
「元気なうちに旅行や趣味に使いたい」「早くもらった方が得かもしれない」と検討される方も少なくありません。

しかし、もしもしの時の「遺族年金」との関係を知らずに繰り上げを選択してしまうと、万が一の時に「こんなはずじゃなかった……」と後悔してしまうケースがあるのです。

老齢年金の繰り上げと注意点

老齢年金の繰り上げとは、原則65歳から受け取る老齢年金を、60歳から64歳までの間に早めて受け取ることをいいます。

その際、老齢基礎年金と老齢厚生年金はセットで繰り上げなければいけません。

1か月早めるごとに、0.4%年金が減ります。
5年早めて60歳から受け取り始めた場合は、65歳で受け取る金額から24%減額され、その金額が一生涯続きます。
  (月10万円なら7.6万円に!)

<老齢年金繰り上げの注意点>
受給額を早く受け取り始めることができる「繰り上げ」ですが、注意点があります。
これを知らずに気軽に繰り上げすると、後で後悔するかもしれません。

1.一度決まった減額率が一生涯続く
2.後から取り消しや変更ができない
3.老齢基礎年金と老齢厚生年金はセットで繰り上げなければいけない
3.障害年金が受給できない場合がある
4.他の公的年金の受給権が発生すると繰り上げ受給がストップする
5.基礎年金の任意加入や追納ができなくなる
など

繰り上げで減った年金は、遺族年金には引き継がれません

「元気なうちに旅行や趣味に使いたい」と考え、60歳から繰り上げ受給していた62歳のご主人が亡くなった場合、遺族年金はいくらになるのでしょうか。

実は、ご主人が繰り上げを選択され、老齢年金が減額されていても、その「減額分」は遺族年金には一切反映されません。

遺族厚生年金を計算する際の基準となるのは、減額された金額ではなく、「減額される前の本来の【65歳時点】の金額」と法律で決められているからです。

この「65歳時点の金額で計算する」というルールは、繰り下げ時にはデメリットでしたが、繰り上げ時にはありがたいですね。

■夫婦2人が健在のときの年金(65歳で受給開始した場合)
   (老齢基礎年金は満額・未成年の子どもはいないと仮定)
2026年度の老齢年金平均受給額をベースに計算しました。

夫の年金:老齢基礎年金(国民年金) 7万円 +老齢厚生年金 10万円
妻の年金:老齢基礎年金(国民年金) 7万円+老齢厚生年金 0万円
合計:24万円(年間288万円)

■夫婦2人が健在のときの年金(夫60歳・妻65歳で受給開始した場合)
   (老齢基礎年金は満額・未成年の子どもはいないと仮定)
2026年度の老齢年金平均受給額をベースに計算しました。

夫の年金:老齢基礎年金(国民年金) (7万円+老齢厚生年金 10万円)×(1-0.24)=12.92万円
妻の年金:老齢基礎年金(国民年金) 7万円+老齢厚生年金 0万円
2人の合計:約19.9万円(年間約239万円)

■60歳で繰り上げしたのち、夫が亡くなったとき
<老齢遺族年金の計算方法>(下記の多い方)
①亡くなった方の老齢厚生年金(減額前)の報酬比例部分の4分の3
②亡くなった方の老齢厚生年金(減額前)の報酬比例部分の2分の1+自身の老齢厚生年金の2分の1

 ①10万円×3÷4=7.5万円
 ②10万円÷2+0万円÷2=5万円

①の方が多いので、このケースの遺族厚生年金は①の金額となります。

残された妻の年金は…
・妻の老齢基礎年金 7万円
・夫の遺族厚生年金 7.5万円
合計 14.5万円

遺族年金は「65歳時点の金額で計算する」ルールにより、繰り下げした時ほど衝撃的な減り方にはなりませんね。

夫婦ともに繰り上げ受給中に夫が亡くなったら?

では、夫婦一緒に繰り上げ受給をしている間にご主人が亡くなってしまっときはどうなるのでしょう。

ここが繰り上げ受給と遺族年金の一番大きな注意点になります!

公的年金には「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3種類がありますが
実は65歳になるまでは「1種類しか受給できない」というルール(1人1年金)があります。

■夫婦2人が健在のときの年金(60歳で受給開始した場合)
   (老齢基礎年金は満額・未成年の子どもはいないと仮定)
2026年度の老齢年金平均受給額をベースに計算しました。

夫の年金:老齢基礎年金(国民年金) (7万円+老齢厚生年金 10万円)×(1-0.24)=12.92万円
妻の年金:老齢基礎年金(国民年金) (7万円+老齢厚生年金 0万円)×(1-0.24)=5.32万円
2人の合計:約18.24万円(年間約219万円)

■60歳で繰り上げしたのち、夫が亡くなったとき
ご主人の遺族厚生年金は7.5万円でしたね。
では、奥様の老齢基礎年金5.32万円と合わせて約12.8万円を受給できるのでしょうか?

ここで「1種類しか受給できない」というルール(1人1年金)が影響します。
奥様は遺族年金か自分の老齢年金か、どちらか一つを選ばなければいけないのです。
 ※65歳以降は「老齢基礎年金と遺族厚生年金」の組み合わせなどは特例として受け取ることができます

このように、繰り上げ受給は思わぬところに影響が出る場合があります。
しっかり調べたうえで選択しましょうね。

 ※現在は、要件に該当すれば、65歳まで年額635,500円の「中高齢寡婦加算」を受給できますが、ゆくゆくは段階的な縮小~廃止となる予定のため、計算には算入していません。

想いをつなぐ相続コンサルタントKayoからのメッセージ

年金の仕組みや老後のお金のシミュレーションは、複雑で、一人で考えるのは本当に大変な作業です。

「繰り上げや繰り下げ、うちの場合はどっちがいいの?」 「万が一の時、私の生活費はどうなるかしら?」

そんな不安や疑問を抱え、モヤモヤしている時こそ、専門家に相談する最高のタイミングです。

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この記事を書いた人

中垣 香代子

中垣 香代子

相続は、税金や手続きだけの問題ではありません。
これからの暮らしやご家族との関係、そしてご自身の安心にも深く関わるテーマです。
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